翌日の夕刻。
父の書斎に呼ばれた私は、緊張しながら襖の前に立っていた。
「小春、入りなさい」
「……はい」
中には父と兄がいた。
そして、もうひとり。
軍服姿の少尉が、静かに座っていた。
「少尉……」
「小春さん」
少尉は私が書斎に入ると、穏やかに頭を下げた。
その姿を見ただけで、胸が落ち着かなくなる。
もしや今日の訪問は、まさか、縁談の返事を急かしに来られたのだろうか。
そう考えた瞬間、私は無意識に身構えていた。
けれど、父の口から告げられたのは、思いもよらない言葉だった。
「小春。葛城君から、お前に話しておきたいことがあるそうだ」
