「小春」
父の声に、小春は顔を上げた。
「私は、お前に幸せになってもらいたいと思っている」
「お父様……」
「明日、葛城君がこちらへ来てくれる。そのときに、お前自身の気持ちを伝えなさい」
小春は、膝の上で両手を握りしめた。
「……私の、気持ち」
「ああ。婚約を受け入れるかどうかは、お前がよく考えて決めればよい」
その言葉に、小春はわずかに目を見開いた。
ーーー自分の意思で決めてよい。
それは、小春がずっと大切にしたいと思っていたことだった。
「……わかりました」
小春は、静かにうなずいた。
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