「ですが、お父様!」
小春は思わず身を乗り出した。
「少尉とは、まだほんの少しお話ししただけです。どのような人なのかも、十分には存じ上げません。それなのに、正式に婚約だなんて……!」
「落ち着きなさい、小春」
「これが落ち着いていられますか!」
声を上げてから、小春は慌てて口をつぐんだ。
父は小さく息をついた。
「お前が驚くのも無理はない。だが、葛城君は真剣に考えたうえでのことだ」
「……どうして、私なのでしょう」
小春は、ぽつりと尋ねた。
それは、父に向けた問いであると同時に、自分自身の胸に浮かんだ疑問でもあった。
少尉とは、まだ互いをよく知らない。
それなのに、どうして彼は、自分を妻に迎えたいなどと思ったのだろう。
父は、少しばかり考えるように目を伏せた。
「それについては、葛城君自身から聞いてみるとよい」
「……少尉から?」
「ああ。私から話せることにも限りがあるからな」
小春は唇を結んだ。
知りたい。
けれど、いざ本人を前にしたら、うまく尋ねられるだろうか。
