「だったら、もう少しお話ししてみたらいいじゃない。結婚するかどうかは、そのあとに考えたっていいでしょう?」
「そんな簡単なことではないわ」
「もちろん、簡単ではないわ。でも、小春。縁談を受けることと、誰かに自分の気持ちを決めてもらうことは、同じではないと思うの」
その言葉に、私は顔を上げた。
「自分で考えて、自分で決める。それなら、小春がずっと望んでいたことに近いんじゃない?」
自分で考えて、自分で決める。
その言葉が、胸の中にゆっくりと染み込んでいく。
そうだ。
私は、縁談そのものを拒みたいわけではないのかもしれない。
ただ、私の気持ちを置き去りにして、すべてが決まってしまうことが嫌だったのだ。
ならば。
私自身が、あの方を知りたいと思ったのなら。
私自身が、この縁談を受けたいと思えたのなら。
それは、私が自分で選んだ未来になるのではないだろうか。
でも、そう思えるのには時間がかかるかもしれないと、小春は思った。
