大正初恋浪漫譚ー突然、陸軍少尉の婚約者になりましたが、どうやら彼は私に恋をしていたようですー


「小春、何をそんなに難しい顔をしているの?」


翌日、女学校で顔を合わせるなり、麻友子が不思議そうに尋ねてきた。


「難しい顔なんてしていないわ」

「しているわよ。朝からずっと、何か考え込んでいるじゃない」

「……実はね」


私は周囲に人がいないことを確かめてから、声を潜めた。


「少尉との縁談のことなの」


麻友子は、ああ、と小さく声を上げた。


「まだ悩んでいるの?」

「悩むわよ! だって、結婚するかもしれない相手なのよ? それなのに、私、その方のことをほとんど知らないのだもの」

「それはそうね」

「私は、自分で好きになった人と結婚したいの。お父様に決められたからという理由だけで、はい、そうします、なんて言いたくないわ」


口にした途端、胸の奥にしまっていた思いが、堰を切ったようにあふれ出した。