大正初恋浪漫譚ー突然、陸軍少尉の婚約者になりましたが、どうやら彼は私に恋をしていたようですー




待つということが、これほど長く感じられるものだとは思わなかった。


葛城千紘は、静かに息を吐いた。

身にまとった礼装の軍服には、一分の乱れもない。

胸元の飾緒も、磨き上げられた靴も、何度も確かめた。

それでも、落ち着かなかった。


今日、俺は結婚する。

小春と。

そう思うたび、胸の奥が熱くなる。


「……千紘」


隣から声をかけられ、顔を向ける。

そこにいたのは、長年の親友であり、今日から義兄となる男だった。


「そんなに緊張することもないだろう」

「緊張などしていない」

「ほう?」


小春の兄は、面白そうに目を細めた。