大正初恋浪漫譚ー突然、陸軍少尉の婚約者になりましたが、どうやら彼は私に恋をしていたようですー



朝、目を覚まして真っ先に思い出したのは、昨夜のことだった。

千紘さまの温かな腕。

頬に触れた優しい手。

そして、初めて交わした口づけ。


「……っ!」


思い出した途端、私は布団の中で顔を覆った。

どうしましょう。

千紘さまと、口づけをしてしまった。

昨夜のことを思い返すだけで、胸の奥がくすぐったくなる。

千紘さまは、どんなお気持ちだったのだろう。

二年間も私を想い続けてくださった方。

その長い時間を思えば、昨夜の口づけが千紘さまにとってどれほど大切なものだったのか、少しだけわかる気がした。

……けれど。


「今日、どんな顔をしてお会いすればいいの……!」


思わず声に出してしまい、慌てて口を押さえる。

いけない、いけない。

私はもう、千紘さまの気持ちを知っている。

そして私自身も、千紘さまをお慕いしているのだ。

恥ずかしがってばかりではいけない。

そう自分に言い聞かせ、私は身支度を整えた。