大正初恋浪漫譚ー突然、陸軍少尉の婚約者になりましたが、どうやら彼は私に恋をしていたようですー


*


「ええっ!? 小春に縁談のお話!?」


翌日の昼休み。

女学校の中庭で、私の話を聞いた麻友子は、目を丸くして声を上げた。


「ちょ、ちょっと、声が大きいわよ!」


慌てて周囲を見回すと、麻友子は「あら、ごめんなさい」と口元を押さえた。

それでも、驚きを隠しきれない様子で私の顔を覗き込んでくる。


「だって、この前は、好きな人と結婚したいって言っていたじゃない」

「……そうよ」


私は膝の上に置いた手を見つめた。


「お父様が決めた方なの。陸軍の少尉で、兄の親友なの。お家柄も申し分ない方だって」

「それで、小春はどう思っているの?」

「どうって……」


私は言葉に詰まった。

どう思っているのか。

それがわからないから、困っているのだ。


「礼儀正しいし、私の話もきちんと聞いてくださるし…綺麗な顔立ちをしているし……」

「あら、お顔立ちの良さに心奪われてしまった?」

「ちがっ…そういう意味ではないわ!」


思わず声を上げると、麻友子はくすくすと笑った。


「ごめんなさい。でも、小春がそんなふうに悩んでいるの、少し意外だったわ」

「意外?」

「ええ。小春なら、お父様に向かって、嫌なら嫌だとはっきり言ってしまいそうだもの」

「……言ったわよ」

「まあ!」


今度こそ、麻友子は声を立てて笑った。

私もつられて笑いかけたけれど、すぐに表情を曇らせた。