大正初恋浪漫譚ー突然、陸軍少尉の婚約者になりましたが、どうやら彼は私に恋をしていたようですー



少尉は、今頃何をしているのだろう。

ふと浮かんだその考えに、小春は手にしていた本をぱたりと閉じた。


「……いけない、また考えてしまったわ」


誰に聞かせるでもなく呟き、慌ててあたりを見回す。

もちろん、部屋には誰もいない。

それなのに、なぜだかひどく気恥ずかしかった。

小春はこほんと咳払いをすると、閉じた本を開き直した。

今度こそ読もう。

そう決めて、文字を目で追い始める。

けれど、頭に浮かぶのは文章ではなく、あの穏やかな眼差しだった。

静かな声音も、こちらの話をきちんと聞いてくださるところも、思い返せば思い返すほど、会いたくなってしまう。


――どうして、こんなに気になるのかしら。

小春は本を膝に置き、首を傾げた。

千紘とは、まだ話すようになってから時が浅い。

好きなものも、苦手なものも、普段どんなふうに過ごしていらっしゃるのかも、まだすべて知らない。

もっと話ししてみたいと思う。

あの方のことを、もっと知りたいと思う。

そう考えた途端、頬がかっと熱くなった。