「仕方ねぇなぁ。拾ってやるよ」
裕也は再びしゃがみ込んだ。
「ほら、立てるか?」
女が身体を動かそうとしたとき、裕也の視線が足元に落ちた。
「……おい」
靴を履いていない。
冷たいアスファルトの上に、裸足の足が投げ出されていた。
足の指先には小さな傷がいくつもあり、乾いた血がこびりついている。
手の甲にも擦り傷。
袖口から覗く腕にも、赤黒い痕が見えた。
裕也の笑みが消えた。
「……なんだよ、これ」
女は何も答えない。
裕也はしばらくその姿を見つめたあと、黒いロングコートを脱いだ。
「ほら、これ着とけ」
女の肩にふわりとかけ、前を合わせてやる。
大きすぎるコートは、座り込んだ女の足元まですっぽり覆った。
「ちっとはマシだろ」
裕也は携帯電話を取り出した。
「おう、大河。車回せ。今いる路地の入口だ」
電話を切ると、女を見下ろした。
