ファーストキスのプロデュース 〜昔フラれた幼なじみを最高の彼氏に育てる方法〜

スローバラードの艶やかな弦の響きが、大講堂の天井から柔らかな光の粒子のように降り注いでいた。

互いの息遣いが触れ合うほどの至近距離。海斗の逞しい右手が、夏凜の細い腰元へとそっと添えられる。


ペールブルーのシフォン越しに伝わってくる手のひらは驚くほど熱く、けれど壊れやすい宝物に触れるようにどこまでも優しかった。
夏凜の華奢な指先が、海斗のジャケットの肩口へと自然に重なる。

三拍子の切ないリズムに身を委ねるうち、張り詰めていた二人の境界線が、温かな奔流となって溶け崩れていく。

(……あぁ、この人なんだ)


夏凜が選んだ爽やかなシトラスコロンの微かな香りと、骨格の逞しさ。

夏凜が教え込んだ理論のすべてを吸収し、世界一かっこよく生まれ変わった幼なじみが、いま、自分だけを腕の中に抱いている。
視線を上げると、切れ長の黒曜石の瞳が真正面から夏凜を射抜いていた。


そこには冷たい敬語の影など欠片もなく、まるで夜空に輝くたった一つの星を見上げるかのような、熱く深い慈愛が溢れていた。


見つめ合う二人の口元に、自然と柔らかな笑みがこぼれ落ちる。