手の中に残された一本の絵筆。
微かに絵の具の匂いが残るその軸を握りしめたまま、夏凜の足は自然と動き出していた。
「神崎……」
無意識のうちに唇からこぼれた名字が、思考の奥底で警鐘のように鳴り響く。
そんなはずはない。あの猫背で日陰に潜むような男子が、自分の記憶に刻まれた少年と結びつくはずがない。
けれど、胸を突き刺す強烈な胸騒ぎを振り払うことができなかった。
微かに絵の具の匂いが残るその軸を握りしめたまま、夏凜の足は自然と動き出していた。
「神崎……」
無意識のうちに唇からこぼれた名字が、思考の奥底で警鐘のように鳴り響く。
そんなはずはない。あの猫背で日陰に潜むような男子が、自分の記憶に刻まれた少年と結びつくはずがない。
けれど、胸を突き刺す強烈な胸騒ぎを振り払うことができなかった。


