ファーストキスのプロデュース 〜昔フラれた幼なじみを最高の彼氏に育てる方法〜

手の中に残された一本の絵筆。


微かに絵の具の匂いが残るその軸を握りしめたまま、夏凜の足は自然と動き出していた。


「神崎……」



無意識のうちに唇からこぼれた名字が、思考の奥底で警鐘のように鳴り響く。


そんなはずはない。あの猫背で日陰に潜むような男子が、自分の記憶に刻まれた少年と結びつくはずがない。


けれど、胸を突き刺す強烈な胸騒ぎを振り払うことができなかった。