ファーストキスのプロデュース 〜昔フラれた幼なじみを最高の彼氏に育てる方法〜

夏凜が思わず苛立ち混じりに声を上げようとした瞬間、少年が散らばったスケッチブックを急いで重ね、両手で抱え込んだ。


「す、すみませんでした……失礼します……」


消え入りそうな声で小さく一礼すると、少年は重い荷物を抱え、逃げるように背中を丸めて廊下の奥へと足早に去っていった。




夏凜はその頼りない後姿を、ぽつんと立ち尽くしたまま見送った。


――神崎。


男子生徒たちがそう呼んだ名字が、胸の奥で妙な棘となって引っかかっていた。


(……神崎? そんな人、うちの学年にいたっけ……?)


何かが胸の奥でざわりと騒ぎ立てるような違和感を拭えないまま、夏凜は床に残された一本の絵筆を拾い上げた。