ファーストキスのプロデュース 〜昔フラれた幼なじみを最高の彼氏に育てる方法〜

床に四つん這いになり、散らばった画材を慌てて拾い集めているのは、一人の男子生徒だった。


だが、その姿は校内を行き交う他の生徒たちとは明らかに異質だった。


初夏だというのに、前ボタンを一番上まできっちりと留めた、サイズ感の合っていない野暮ったいブレザー。


極端な猫背のせいで、本来の体格が完全に押し殺されている。



そして何より、顔の半分以上を覆い隠すように重たく垂れ下がった黒髪の前髪。その隙間からは、顔の輪郭に対して大きすぎる、垢抜けない黒縁の太メガネが覗いていた。



「す、すみません……っ、怪我は、ありませんでしたか……!」


掠れた、ひどく控えめな声。


少年は夏凜の顔を一度も見上げようとせず、震える指先で絵の具のチューブを一つずつ拾い集めていく。


その背中には、まるで「自分はここに存在していません」とでも言いたげな、濃い日陰の気配がへばりついていた。