ドンッ
鈍い音が静まり返った図書室に響き渡り、私の頭のすぐ横の本棚に、遠崎くんの大きな右手が激しく叩きつけられた。
「ひゃっ……!」
思わず小さな悲鳴が漏れて、私はぎゅっと目を瞑った。
いわゆる「壁ドン」の体勢。
私の背中は完全に硬い本棚に押し付けられていて、一歩も後ろへは下がれない。
恐る恐る目を開けると、目の前には私を閉じ込めるように立ちはだかる遠崎くんの綺麗な顔があった。
あまりの距離の近さに彼のブレザーの生地が私の制服と擦れ合い、あの甘くて切ないシトラスの匂いが、私の呼吸を支配する。
「遠崎、くん……近、いよ……」
心臓が、今までにないくらいバクバクと暴れて、胸が苦しい。
「……これだけ近づかねぇと、お前、何も気づかねぇだろ」
遠崎くんの声は、掠れていて、今にも消えそうに震えていた。


