「……お前があいつの頭、触ろうとしたから」
「え……?」
「あいつが『可愛い』だの『デート』だの言ってお前にヘラヘラ笑いかけて、お前も笑顔で。……見てて胸糞悪かったんだよ」
遠崎くんの声が、小さく掠れていく。
彼は私のスクールバッグを握る手にぐっと力を込めると、吐き捨てるように言った。
「他の男に、あんな顔すんな。……俺以外の奴に、簡単に笑いかけんな」
「え……?」
頭が真っ白になった。
遠崎の言葉の意味がどうしても理解できない。
『俺以外の奴に、簡単に笑いかけんな』って。
どういう、意味……?
私が呆然と瞬きをしていると、遠崎くんは我に返ったように目を見開き、バッと私から視線を逸らした。
その顔は、夕暮れの空よりもずっと赤く染まっていた。
「……何でもない、忘れた。早く行くぞ」
大股で歩き出す遠崎くんの後ろ姿。
私はドクドクと激しくなる胸の音をなだめながら、彼の大きな背中を必死に追いかけた。


