氷の王子の、溶けない独占欲。





私が恐縮していると、一ノ瀬先輩は「じゃあ、頼んだぞ」とだけ言い残して、事務作業へといってしまった。








「じゃあ遠崎くん、よろしくねっ……!」








私がほっとして遠崎くんを見上げると、彼はフイッと私から視線を逸らした。








「別に。先輩の命令なら、行くしかないだろ」








声は冷たい。けれど、その横顔はさっきまでの険しさが嘘みたいに消えていて、どこかホッとしたような空気が少しだけ漂っている気がした。








「む〜。じゃあ桜庭先輩、お願いします! 遠崎先輩には気をつけて下さいねっ!」








「……うん? 行ってくるね、胡桃くん」








胡桃くんが手を振って見送ってくれる。




……気をつけてって、どういうことだろう?




不思議に思いつつも手を振り返すと、隣にいた遠崎くんが、私のスクールバッグを無言でひったくるようにして自分の手に持った。