私は、可愛い後輩を微笑ましく見ていた。
──その瞬間。
パキッ、とカウンターの奥から、不穏な硬い音が響く。
驚いて視線を向けると、遠崎くんが手に持っていた定規の端が……欠けている。
遠崎くんの顔は、いつもの『氷の王子』を通り越して、感情が見えない機械のような顔だった。
その機械のような無表情から漂うただならぬ殺気に、私と胡桃くんは完全に圧倒され、言葉を失って立ち尽くすしかなかった。
「……おい」
低く、地を這うような声が図書室の空気を一瞬で凍りつかせた。
「遠崎、くん……?」
「……買い出しなら俺が行く。お前はここに残って日誌書いてろ」
遠崎くんは立ち上がると長い脚で歩み寄り、私と胡桃くんの間に割り込むようにした。

