数分ほど歩いただろうか。
頭の上で、激しい雨音が響いている。
歩くたびに、遠崎くんの制服の袖と私の制服の袖がすれ違う。
昨日、図書室で後ろから支えられたときと同じ、ほんのり甘いシトラスの匂いが、雨の湿った空気の中に優しく溶け込んでいた。
「あの、遠崎くん。本当にありがとね。すごく助か、りました……」
私は歩幅を遠崎くんに合わせながら、隣の綺麗な横顔を見上げた。
なぜか敬語になってしまって、少し焦る。
遠崎くんは正面を向いたまま、ポケットに左手を突っ込んで、ぶっきらぼうに答えた。
「別に。委員会同じじゃなきゃ置いてってた」
「あははっ、そうだよねっ。でも、やっぱり優しいなって思って……」
「優しくない。お前が明日風邪でも引いたら仕事が全部俺に回ってくるだろ。それが迷惑なだけ」

