満足して顔を上げると、すぐ隣から視線を感じた。
遠崎くんが、頬杖をついたまま、ジッと私の手元──というより、私の顔を至近距離で見つめていたのだ。
「……えっと、遠崎くん? 私の顔、何かついてる……?」
そう思って慌てて頬に手を当てると、遠崎くんはハッと我に返ったように視線を逸らした。
その耳の裏が、みるみるうちに赤くなっていく。
「……別に。手際がいいなと思っただけ。……バカにして悪かった」
「ううん! 褒めてもらえて嬉しい」
私が嬉しくなってにこっと笑うと、遠崎くんはこれ以上ないくらい苦い顔をして、自分の前髪をがしがしと掻いた。
「お前……本当にそういう顔、やめろって……」
「え? そういう顔?」
「なんでもねぇよ! 早く終わらせろ」
「……もう、すぐ怒るんだからっ」
私は小さく唇を尖らせながら、最後の1冊を仕上げた。
私は遠崎くんとの他愛ないやり取りが、不思議と、少しだけ好きになっていた。


