ちゃんと話せるかな。
邪魔だって思われちゃったら、どうしよう。
「失礼します……」
恐る恐る図書室の重い木の扉を開けると、そこには独特な空気が流れていた。
古い紙の匂い。
夕方のオレンジ色の光が、窓から長く差し込んで、床に綺麗な影を作っている。
そして、カウンターの奥。
夕日に照らされながら、黙々と本のバーコードを読み取っている人影があった。
「あ……」
遠崎くんだ。
制服のシャツの袖を少しまくって、綺麗な長い指で手際よく本を捌いている。
横顔があまりにも美しくて、私は一瞬、入り口で足が止まってしまった。
ピッ、ピッ、と機械的な音だけが、静かな図書室に響く。
彼は私が中に入ってきたことに気づいているはずなのに、こちらをチラリとも見ようとしない。
まるで誰もいないかのような徹底した無視。

