終わった恋の、その後で。 〜プレイボーイな曲者御曹司は私にだけ奥手らしい〜

――――あれは、とあるロマンス系のドラマが話題を博していた頃。

そのジャンルに馴染みのない人間でも連日ニュースで取り沙汰されると話題作りに目が向くような、そんなムーブがあった時期。

主人公の背景は、まるで伊佐美の家庭事情を反映したような内容だった。

ある財閥の御曹司は、母を蔑ろにして捨てたクズの父親に復讐するため、跡継ぎ欲しさに擦り寄ってきた父親に従順なフリをして懐に忍び込み、会社の乗っ取りを企てる。

代々、同族経営の家柄で、優秀な息子を育てたに会社を譲ると言う祖父の意向のもと、御曹司は叔父の息子と対立しながらもヒロインの支えを得て自分の派閥を作り上げて行くが……しかしヒロインと恋に落ちて復讐をやめ、会社から辞めて二人で花屋を始めるといった内容だ。

ラストの復讐を諦める過程がヒロインとの恋愛で美しく飾られており、主人公は自分の人生を生き直すといった締めくくりだ。

なぜか世間にはこれがウケるらしい。

昨今は復讐ものが流行っているが、結局人間は綺麗な話が好きなのだ。

サイネージに映るドラマの広告に視線を止めていると、一緒に外に出ていた理央が言った。

「それ、私あんまり好きじゃないんですよね」

意外な言葉だった。

「へぇ。なんで?」

「だって主人公の努力が水の泡じゃないですか。復讐で培った時間も人生なのに、なかったことみたいで嫌ですよ」

――確かに。

言い得て妙というべきか、理央は時々、真理をついたような事を素で言ってくる。

「え、伊佐美さんこういうのが好きなんですか!?似合わないなぁ」

すぐに返事をしないでいると大袈裟に顔を顰めてきて、無意識に理央の本音を確かめるような言葉が口をついて出た。

「おいおい。仮に俺があの主人公で、お前がヒロインと考えてみ。浄化されたみたいに花屋に収まるエンディングに佐山だって感動するんじゃないの?」

「しませんね」

被せるように否定された。

そしてこう言ったのだ。

「伊佐美さんは、復讐果たして、ざまあみろって笑ってそうですし。私は断然、そっちの方が爽快で格好いいと思います」

真顔で返す佐山の言葉に、何故か勝手に自分が肯定された気がした。

――あぁ、やっぱいいな。この子。

自覚した瞬間だった。

「というか。なんで自分を主人公に宛ててるんですか?」

「例え話だよ。良いだろ、別に」

しかし初めて芽吹いた恋を自覚すれば、恐ろしくもなった。