新しく白々しい私の肉

お茶を淹れる小林の後ろ姿は、いつ見ても丁寧そのものだ。

「どうぞ」と差し出された湯呑みから、鮮やかな緑色のお茶をずずっと口に含む。

広がる高貴な茶葉の香り。――そして、ねっとりとした確かな泥の味。

(……まただ。これ、直球で田んぼの底の味がする)

「どう? 美味しい?」

小林は純粋な笑顔を見せるが、その背後の壁にはなぜか大量のお札(ふだ)が貼られており、部屋の蛍光灯がチカチカと不気味に明滅し始めた。

「美味しいよ……。 アメンボにとっては。ところで小林、あの壁のやつ何?」

「え? インテリアだよ! お湯の温度にこだわると、部屋の波動がね」

「完全に呪いを食い止める時のやつじゃん」

その時、ズズ……とクローゼットの中から何かが這い出てくる物音が響き、急激に部屋の気温が下がって自分の吐く息が白くなった。
「ねえ、なんか奥から変な音聞こえない? 息白いし」

「気のせいだよ! この泥茶葉、特別なルートでしか手に入らなくてさ」

「いま自分で『泥茶葉』って言ったな!? 自覚あったのかよ!」

小林が「おかわりね」と2杯目を注いだ瞬間、湯呑みの水面に、見知らぬ落ち武者の顔がくっきりと浮かび上がってこちらを睨みつけてきた。

「うわあああ! 水面にめっちゃ怒ってる人が浮いてる!!」

「ひどいな、ただの茶柱だよ」

「茶柱の概念が崩壊するわ! どう見ても怨霊の顔だろ!」

「そんなことより、早く飲まないと冷めちゃうよ?」

小林が微笑んだ瞬間、彼の目が白目なしの真っ黒な空洞に変わった。

私は恐怖でガタガタと震えながら、落ち武者と目が合っている泥水を口に運ぶ。

味はただの、ほんのりとした泥だった。