新しく白々しい私の肉

オフィスで残業している鈴木のキーボードを叩く音は、異常なほど丁寧だった。

カタカタカタ、カタカタカタ、ッターン!ドドドッドド

最初はブラインドタッチが上手いなと思って聞いていた。だが、作業に集中しようとすればするほど、その打鍵音が妙にリズミカルな、聞き覚えのあるイントロのように耳に触る。

(……待てよ。何だこの不快なリズムは)

耳をすまして、よく聞いてみる。



カタカタ(バカ)カタカタ(ハゲ)

カタカタカタカタ(キモイ・シネ)

ッターン!(ゴミ!)

ドドドッドド(誰もお前を愛さない)

「……おい小林。お前のタイピング音、よく聞いたら全部悪口になってないか?」

「え? 何言ってるの、ただのテンキーの音だよ」

小林は至って真面目な顔で画面を見つめている。

しかし、彼がそう答えた瞬間、オフィス全体の空気が一変し、誰もいない会議室からガタガタと激しい物音が響き始めた。同時に、私のスマートフォンの画面に「お前だお前だお前だ」と謎の通知が埋め尽くされる。

「いや絶対におかしいって! ほら、いま『ッターン!』のところで部屋の温度3度下がったし!」

鈴木がさらにキーボードを叩く速度を上げる。
タタタタタタタタタ(無能・無能・ハゲ)

「そんなことより、早くこのデータ確認してください」

鈴木がこちらを振り向いた瞬間、彼の顔のパーツがすべて消え去り、ただのキーボードの『Enter』キーになっていた。

俺は恐怖で涙目になりながら、差し出された資料を受け取る。

画面には、とても綺麗に整列したExcelの売上表が映っていた。