優しい死神さんと、空気じゃない私

 玲奈は絶句した。見たままの姿を素直に伝えるべきなのか言葉に詰まったが、鏡に映らない彼の恐怖と痛みが、痛いほど伝わってきた。

 死神の震える手が、玲奈の頬に触れたいと切なく差し出される。

 けれどその瞬間、彼の手先が朝日に焼かれるように、ハラハラと黒い灰になり始めていた。

 玲奈と死神は、失われていくその手をただ息を呑んで見つめる。

 荒い息を吐きながら、死神は何かを必死に求めるように、ゆっくりとどこかに向かって歩み始めた。

 体は少しずつ灰になりながら、立ち昇り消えていく、どうすることもできない玲奈は、彼の歩みに合わせついていくことしかできないでいた。

 死神は『これが最後』だと、別れの言葉のように想いを綴っていた。
 それは、優しい言葉でもなく、彼女を労わる言葉でもない、彼の願いだった。

「君は学校で、みんなに合わせて心無い言葉に背を向けていたね。でも、心の中ではずっと泣いていた。僕は知っているよ。君は昔から心がとても澄んでいて、優しいってことを」

 玲奈は心に刺さった杭が今引き抜こうとされているようだった。溢れる涙が、「うん」と返事と共に、ポロポロと流れ落ちた。

「泣いていた君は、これからどう向き合うのだろう。君の人生という名の物語は、ハッピーエンドなのかな? 最後まで見れないなんて残念に思うよ」