優しい死神さんと、空気じゃない私

「あ、あのっ! そ、それより……あの時、子供を助けた時は一体何をしたの? 私、その時の記憶がなくて。なんだか私が周りに感謝されちゃってるんだけど……」

 すると死神は、視線を逸らすように静かに顔を伏せた。

「……ごめん。あの時は、子供を助けるために……咄嗟に君の身体を借りたんだ」

 玲奈はなんとなく察してはいたものの、他人に体を乗り移られたという事実に、微かな抵抗感を覚えていた。相手に見せまいとしていたのに、思わず眉をひそめてしまう。

 彼女の表情の変化に気づいた死神は、慌てて向き直ると深々と頭を下げた。

「本当に……ごめんなさい!」

「う、うん……」

 玲奈は視線を落とし、二人の間に気まずい沈黙が流れる。

 すると彼は、どうすればいいか分からないように視線を彷徨わせたあと、静かに死神の秘密を語り始めた。

「死神はね……誰の体にでも乗り移れるわけじゃないんだ」

 その言葉に、玲奈はそっと顔を上げ、彼を見つめた。