あの日の約束は今になって♡35年後の再会

オーディション会場の扉を開けると、老若男女問わず、たくさんの人たちが順番を待っていた。ざっと数えると二十人近くはいるだろうか。みんな真剣な表情で、時折緊張した面持ちで歌の練習をしている姿を見て、愛斗の胸は一気に不安でいっぱいになった。
「こんなにたくさんの人がいるんだ……。自分なんかが受かるわけないのかもしれない」
自信が揺らぎ、思わずうつむいたそのとき——ふと、幼い頃の記憶がよみがえった。
ちびっこのど自慢のステージの袖で、緊張して動けなくなっていた自分に、叶正子が優しく微笑みかけてくれた光景だ。
「あなたならできるよ」
その一言が、今でも耳元で響いている。
愛斗は深呼吸をし、胸いっぱいに息を吸い込んだ。「大丈夫。あの時もできたんだから、今日だってきっと大丈夫」
順番が呼ばれ、愛斗は扉を開けて会場の中へ進んだ。そこには憧れの人たちが立っていた。
叶正子、叶高、叶ありさ、吉村勇一、そして舞台監督の内堀さん。緊張が走る中、愛斗は一歩前に出た。
「末山愛斗、三十六歳です。私は七歳の頃からずっとサーカスのファンで、中でも正子さんの大ファンです。三十七年前、ちびっこのど自慢に出たとき、緊張している私に正子さんが『あなたならできるよ』と声をかけてくださいました。そのおかげで優勝することができました。今日はあの頃からの夢を叶えたく、このオーディションに挑戦します」
心を込めて自己紹介を終え、愛斗は「ミスターサマータイム」を歌い上げた。
歌い終わったあとは待合室で結果を待つ。一時間ほどが経ち、一人ずつ名前が呼ばれていく。緊張が高まる中、ついに自分の名前が呼ばれた。
「末山愛斗さん——合格です」
会場の中から拍手が起こった。
他の皆は残念ながら不合格となり、愛斗は複雑な気持ちになったが、スタッフが「合格した人のために、お祝いのパーティーを用意しました」と声をかけてくれた。
サーカスのメンバーたちも笑顔で迎えてくれた。
「おめでとう、愛斗くん!」正子が優しく声をかける。
「おめでとう! これから一緒に頑張ろう」ありさが嬉しそうに言う。
「おめでとう。心から歓迎するよ」高がにっこりと笑う。
「おめでとう! 新しい仲間、楽しみにしてたよ」勇一も笑顔で祝福してくれた。
「明日からよろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」愛斗は深くお辞儀をし、心からの感謝を伝えた。
会場を出ると、外には遠藤翼、香乃、徳井のりおが待っていてくれた。
「愛斗、おめでとう!」
「受かったんだね、すごい!」
みんなが喜んでくれる姿を見て、愛斗は胸がいっぱいになった。「ありがとう。これから頑張るね」
その足で事務所の先輩、島あきのさんと亜蘭さんに電話をかけた。
「もしもし、実はサーカスのオーディションに合格しました!」
「えっ、本当に!? おめでとう!!」
「すごいわ! 本当によかったね、心から応援してるからね」
温かい言葉が電話の向こうから届き、愛斗はます嬉しくなった。
夜になると、会社の同僚の清家崇と待ち合わせた。
「おめでとう! 乾杯!」
ビールのグラスを合わせ、二人は笑い合う。
「でもさ——正子さんと、いつか恋人同士になっちゃうんじゃないの? なんだかそうなりそうだな」
崇がからかうように言うと、愛斗は慌ててごまかした。
「な、何言ってるんだよ。そんなんじゃないって! ただ、ファンだっただけで……」
顔が少し熱くなるのを感じながらも、心の中では小さなときめきが芽生えているのを感じていた。
家に帰り、窓辺に立って夜空を見上げる。
「受かったんだ……。本当に、サーカスの一員になれるんだ」
愛斗は胸に手をあて、自分のことを一番に褒めてあげたくなった。三十五年の夢が、ついに現実のものになったのだ。明日から始まる新しい日々に、心がわくわくがとまない。