夕方からの定食屋は昼とは変わって、お酒を飲む人が多かった。話し掛けてもいないのに、酌をしてほしいと何度か頼まれた。でも、祥子さんが間に入ってくれて、「あんた、子ども生まれたばっかりだろ。さっさと帰りな」と言って、追い払うと、帰り際には「またおいでよ」と言っていた。
また他の客には、「あんたは飲みすぎ、また医者に怒られるんだから、ほどほどにしときなよ」と言って、背中を思いきり叩いていた。きっと、祥子さんは町に詳しい人だと感じた。
そこから夜が更け始めた頃に、店内を片付けていると、祥子さんが厨房から声を掛けてきた。
「もういいよ。そこら辺にしときな。この町は夜になると暗いから、気をつけて帰りなよ」
「はい。お疲れ様でした」そう言いながら、エプロンを外して綺麗に畳み、入口から近い小上がりの端に置いた。そして、店から出るときには、また祥子さんが声を掛けてきた。
「また明日ね」
「はい。また明日」
振り返ってから、そう言い、軽く頭を下げて、店から抜け出した。祥子さんの言う通り、辺りは街灯が少なくて、ぼんやりした湊町が情緒的に見えた。
少し荒い波音を聞きながら、家に向かって足を進めていると、背後から自転車が近づいてくる音がした。
「ちょっと、そこの人……」と声がして、止まらずに歩いていたら、自転車に乗った駐在さんが目の前に回り込んできた。
そこで自転車を停め、警察手帳を見せながら、声を掛けてきた。
「湊町交番の柏原です。少しだけでいいので、協力おねがしまーす」と言った口調は軽く、見た目も若くて、新人のように思えた。制服は着崩してないし、自転車も綺麗だけれど、使い古されたような形跡も見て取れた。
「なんですか?」そう言ったとき、柏原さんが警察手帳を仕舞い、新しい手帳を手にした。そこに小さなライトを指に挟み、手帳と一緒に器用に持ってから、こちらを向いた。でも、そのライトはこちらの顔を照らしていた。
「え、かわ……、すみません。えっと、この町には旅行ですか?」柏原さんはそう尋ねてきた。
「いえ、引っ越してきたばかりです」こちらが返すと、柏原さんは「……そうですか。ご協力ありがとうございました。この町には危ない奴は居ないけど、若い女性の一人歩きは危ないから、十分に気をつけてください。では」と敬礼をし、自転車に乗って去って行った。
何だか軽い駐在さんだったけれど、町を見回っている様子もあって、頼もしく思えた。
また他の客には、「あんたは飲みすぎ、また医者に怒られるんだから、ほどほどにしときなよ」と言って、背中を思いきり叩いていた。きっと、祥子さんは町に詳しい人だと感じた。
そこから夜が更け始めた頃に、店内を片付けていると、祥子さんが厨房から声を掛けてきた。
「もういいよ。そこら辺にしときな。この町は夜になると暗いから、気をつけて帰りなよ」
「はい。お疲れ様でした」そう言いながら、エプロンを外して綺麗に畳み、入口から近い小上がりの端に置いた。そして、店から出るときには、また祥子さんが声を掛けてきた。
「また明日ね」
「はい。また明日」
振り返ってから、そう言い、軽く頭を下げて、店から抜け出した。祥子さんの言う通り、辺りは街灯が少なくて、ぼんやりした湊町が情緒的に見えた。
少し荒い波音を聞きながら、家に向かって足を進めていると、背後から自転車が近づいてくる音がした。
「ちょっと、そこの人……」と声がして、止まらずに歩いていたら、自転車に乗った駐在さんが目の前に回り込んできた。
そこで自転車を停め、警察手帳を見せながら、声を掛けてきた。
「湊町交番の柏原です。少しだけでいいので、協力おねがしまーす」と言った口調は軽く、見た目も若くて、新人のように思えた。制服は着崩してないし、自転車も綺麗だけれど、使い古されたような形跡も見て取れた。
「なんですか?」そう言ったとき、柏原さんが警察手帳を仕舞い、新しい手帳を手にした。そこに小さなライトを指に挟み、手帳と一緒に器用に持ってから、こちらを向いた。でも、そのライトはこちらの顔を照らしていた。
「え、かわ……、すみません。えっと、この町には旅行ですか?」柏原さんはそう尋ねてきた。
「いえ、引っ越してきたばかりです」こちらが返すと、柏原さんは「……そうですか。ご協力ありがとうございました。この町には危ない奴は居ないけど、若い女性の一人歩きは危ないから、十分に気をつけてください。では」と敬礼をし、自転車に乗って去って行った。
何だか軽い駐在さんだったけれど、町を見回っている様子もあって、頼もしく思えた。



