推しカプの邪魔はしたくないのに、何か間違えたようです

 鞄に荷物を詰めながら、真由美が何気なく口を開いた。

「そういえば、席離れちゃったね」

「ああ……うん。残念」

 今日までは真由美と席が近かった。
 休み時間に振り返れば話せたし、授業中に分からないところがあれば、こっそり教えてもらうこともあった。

 それが今日の席替えで、教室の端と端。
 親友と離れてしまったことだけは、ちょっと残念だ。

「私も残念。美織と席近い方が楽だったのに」

「私も」

 すると、真由美は何かを思いついたように、パンッと胸の前で両手を合わせた。

「じゃあ田中に頼んでみようかな」

「何を?」

「席、替わってって」

「それはダメ!」

 自分でも驚くほど大きな声が出た。
 真由美が目を丸くする。

「……そんな全力で拒否する?」

「ダメ。絶対」

「なんで?」

「だって……」

 私は声を潜め、誰もいない教室だというのに周囲を確認した。
 大丈夫。
 田中君も小森君もいない。
 それを確認してから、真由美の机に両手をつく。

「あの席、田中君と小森君がワンセットで見られるんだよ」

「…………」

「しかも、至近距離で」

「……ああ」

 真由美の顔から一瞬にして興味が失われた。
 この顔は知っている。
 私がBLの話を始めたときの顔だ。