推しカプの邪魔はしたくないのに、何か間違えたようです

「おはよー」

 いつものように教室へ入ると、真由美はもう自分の席に座っていた。
 昨日の席替えで離れてしまったから、話すチャンスは逃さない。
 私は真由美の机に立ち寄った。

「おはよう、真由美」

「おはよ。宿題やってきた?」

「ばっちり!」

 鞄を軽く叩き、私はニカッと笑った。
 すると、真由美は片眉をあげ、ぽつりと言う。

「昨日のこと反芻して、夜遅くまでニヤニヤしてたのかと思った」

「失礼な。そこまで腐っていません」

「どうだか」

 真由美が疑わしそうな目を向けてくる。

 確かに昨日の光景を寝る前にちょっと思い出したけれど。
 ちょっとだけ。
 本当に、ちょっとだけだ。

 そんな他愛のない話をしていたとき、少し離れたところから声が聞こえてきた。

「なんか、うるさーい」

「昨日、田中に話しかけられたからって、調子こいてるんじゃない?」

 決して大きな声ではなかった。
 だけど、こちらに聞かせるつもりなのは明らかだった。
 声のした方へ振り返る。

 岩井(いわい)さんと松崎(まつざき)さんが、こちらを見ながら何やら話していた。

 二人とも、いつもクラスの中心にいる女子たちだ。

 流行には敏感で、制服の着こなしも髪型も抜かりがない。
 休み時間になれば、いつも何人かの女子が二人の周りに集まっている。

 いわゆる一軍女子――というやつだろう。