推しカプの邪魔はしたくないのに、何か間違えたようです

「……あれ、美織のことじゃない?」

 真由美が眉を寄せる。

「そうみたい」

「ムカつく」

「いいよ。放っとけば」

 別に、田中君と何か特別なことがあったわけじゃない。
 たまたま席が隣になって、話しかけられただけだ。

「田中君、人気者だもんね。私にも親切に話しかけてくれたけど、みんなに優しいんだから、そんなに気にしなくてもいいのに」

「……美織」

「なに?」

「本気で言ってる?」

「うん」

 真由美が小さくため息をついた。

「田中、モテるからね」

「そだね」

 それなら知っている。

 背が高くて、スポーツ万能。
 明るくて、誰にでも気さく。

 女子に人気があるのも当然だと思う。

 だけど……私としては、田中君を見ている女子よりも、田中君の前にいる小森君の方がずっと気になる。

「まあ、心配しなくても大丈夫だよ」

「何が?」

「私、田中君をどうこうしようなんて思ってないから」

「…………」

「むしろ、どうこうなってほしい相手は別に……」

「それ以上言わなくていい」

 真由美にぴしゃりと止められた。

 ちぇっ。
 せっかく田中君と小森君の素晴らしさを語ろうと思ったのに。

「とにかく」

 真由美が岩井さんたちをちらりと見てから、私に視線を戻した。

「何か言われたら、ちゃんと言い返しなよ」

「大丈夫だって」

 そう答えて、私は自分の席へ向かった。

 このときは、本当にたいしたことだとは思っていなかった。