鹿目くんに親指で指差された澪央くんがガタッと勢いよく立ち上がった。
「…わ、悪い。勝手に夏宮のことを喋って…」
「え?それは全然大丈夫だけど……澪央くん、やっぱり風邪引いてるでしょ?顔が赤いよ」
「~~~っ」
「…ブハッ!」
「(え、今笑った!?)」
私の言葉に、何故か吹き出した鹿目くん。
ちらりと見ると、彼は右手で口を抑えて体を震わしているではないか。私、変なこと言ってないと思うんだけど…
「いや、澪央の顔が赤いのは…」
「っ、お前はもう何も喋るな…!!」
「むぐっ」
澪央くんがどこか焦った様子で鹿目くんの口元を抑えている。
ど、どうしたんだろう??
首を傾げていたら、視界の端にお菓子が入った箱が見えた。
あ、そういえば、今日はまだ1個も食べてない。…………食べようかな。
ソワソワしながら私は、まだ何か言い合っている二人の横でお菓子に手を伸ばした。
《星乃》
「っ!」
指先がお菓子に触れる寸前に聞こえた優しい声。
とっさに後ろを振り向いてしまった。
……誰も、いない。
誰もいないのに、その声は、まだ私を呼んでいる。
《星乃》
《ほしの》
《……こっちにおいで》
カチッ
やけに耳に響いた音と共に、視界が暗転して、それから目の前で構えている明るい色をした扉。
《─────おやすみ、星乃》
もうとっくに耳に馴染んでしまった声が発する聞いたことのない言葉の数々に、鼓動が早くなっていく。
「…………あなたは、誰なの?」
そんな疑問を呟いても、私が求めている答えが返ってくることはなかった。
◇



