午前2時の東堂さん家─夏宮星乃のミステリアスな日々。─



会話の途中でヘッドホンを見て思い出したのか、澪央くんが私の後ろにある本棚を指差した。


わ、凄い量。氷雨くんって読書家なんだ。…そういえば、氷雨くんと初めて対面した時も本を読んでいたっけ。


とりあえずそこから一冊だけ拝借して、いつ幽霊が来ても大丈夫なように準備を整えた私は、改めて澪央くんにお礼を言った。


「澪央くん、本当にありがとう」


「いいよ。…夏宮にはこの家の事で怖い思いをしてほしくないから」


「……っ」


申し訳なさそうに言った澪央くんに、胸が締め付けられる。


…私がホラーに平気だったら、こんなことを言わせなくて済んだのかな。


────こんな顔をさせなくて済んだのかな…。


「……あ、の」


「ん?どうした?」


「た、確かに私はホラーがダメだけど、この家に対して嫌だと思ったことはないよ…!」


「…え?」


「だって、怖いだけじゃないから。澪央くんと氷雨くんがいるから大丈夫っていうか…ほら、美味しいお菓子も食べられるし!?本当、しきたりを守るふたりを尊敬するよ…!!」


「…はは、ありがとう。……よかった」


「っ、」


あたふたしながらも言葉を紡いだ私に、心底嬉しそうに笑った澪央くんにまた胸が高鳴った。


ううう、イケメンの笑顔の破壊力よ…っ!!


思わず胸の辺りの服を掴んでしまった私に、澪央くんが心配そうに首を傾げた。


「…夏宮、どうした?」


「な、なんでも…っ!───そ、そういえば、澪央くんは私が今日ここに来ることは分からなかった?」


「ああ、夏宮が現れるまでは全く分からなかった。どうやら夏宮だけは『例外』みたいだな。…まぁ兄も言っていたけど、生きている人間だからかもしれないな」


「そ、そうなんだ…私以外にもいなかったの?その…生きている人間がこの時間帯に訪れてきたことは…」


「いや、俺たちが知る限り、夏宮だけだ」


「そう、なんだ…。…なんでだろう?」