会話の途中でヘッドホンを見て思い出したのか、澪央くんが私の後ろにある本棚を指差した。
わ、凄い量。氷雨くんって読書家なんだ。…そういえば、氷雨くんと初めて対面した時も本を読んでいたっけ。
とりあえずそこから一冊だけ拝借して、いつ幽霊が来ても大丈夫なように準備を整えた私は、改めて澪央くんにお礼を言った。
「澪央くん、本当にありがとう」
「いいよ。…夏宮にはこの家の事で怖い思いをしてほしくないから」
「……っ」
申し訳なさそうに言った澪央くんに、胸が締め付けられる。
…私がホラーに平気だったら、こんなことを言わせなくて済んだのかな。
────こんな顔をさせなくて済んだのかな…。
「……あ、の」
「ん?どうした?」
「た、確かに私はホラーがダメだけど、この家に対して嫌だと思ったことはないよ…!」
「…え?」
「だって、怖いだけじゃないから。澪央くんと氷雨くんがいるから大丈夫っていうか…ほら、美味しいお菓子も食べられるし!?本当、しきたりを守るふたりを尊敬するよ…!!」
「…はは、ありがとう。……よかった」
「っ、」
あたふたしながらも言葉を紡いだ私に、心底嬉しそうに笑った澪央くんにまた胸が高鳴った。
ううう、イケメンの笑顔の破壊力よ…っ!!
思わず胸の辺りの服を掴んでしまった私に、澪央くんが心配そうに首を傾げた。
「…夏宮、どうした?」
「な、なんでも…っ!───そ、そういえば、澪央くんは私が今日ここに来ることは分からなかった?」
「ああ、夏宮が現れるまでは全く分からなかった。どうやら夏宮だけは『例外』みたいだな。…まぁ兄も言っていたけど、生きている人間だからかもしれないな」
「そ、そうなんだ…私以外にもいなかったの?その…生きている人間がこの時間帯に訪れてきたことは…」
「いや、俺たちが知る限り、夏宮だけだ」
「そう、なんだ…。…なんでだろう?」



