明るくなった視界に真っ先に飛び込んできたのは、広い空間に佇む黒髪の彼。
………ああ、今夜も此処に来てしまった。
「…夏宮」
突然現れた私に、澪央くんが僅かに目を見開いた。容姿が瓜二つの彼らは、私への呼び方と態度と仕草で区別が付くのだ。
「み、澪央くん。き、今日もお邪魔します…」
「ああ。今、紅茶淹れるから待ってろ」
今宵も家にお邪魔した私を澪央くんは快く歓迎してくれる。
申し訳なさと感謝のふたつを、とりあえず心の奥にしまっておく。私は取り繕うように、ぎこちない笑みを浮かべた。
「紅茶、ありがとう。…き、今日も澪央くんなんだね」
「あ、あー…しばらくは俺が担当かな…」
「そうなの?(そういうのもアリなんだ…)」
「ああ…。(だって兄貴が変に気を遣うから…)」
「そっか」
「……………もしかして、氷雨の方が良かった?」
「…えっ?」
質問に驚いて顔を上げると、どこか不安そうな表情(かお)をした澪央くんが私を見ていた。
「そ、そんなこと思ってないけど…?」
「そう?なら良かった」
「う、うん…?」
ホッとした彼の様子に複数のハテナが頭上に浮かんだけど、とりあえず温かいうちに紅茶を飲んだ。
……うん、本当に、氷雨くんの方が良かったとかそんなことは一切思っていない。ていうか普通に考えて失礼だし。
……ただ、澪央くん相手だと謎に緊張してしまうのは何でだろう…?
「…あ、早速だけど、あと少ししたらソファーの後ろに隠れた方が良いよ。二分後に来るから」
「ひぃ…っ!!」
「え、もう隠れるの?」
澪央くんの家に来て早々、お洒落なソファーの後ろに隠れた。
即行動した私に笑い声を溢した澪央くんに、肩を叩かれるまでの時間がやけに長く感じた。
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