◇
あと数時間で日付が変わろうとしている。
昨日と違って日中に課題をしっかり終わらせたし、明日の準備もバッチリだ。
「(あとは寝るだけ…)」
自分の部屋にある時計盤をちらりと見る。
9時半…。
「…今日も澪央くんの家に行くのかなぁ…」
まだ分からない未来への疑問が口から零れたその時。
コンコン、
「っ!」
「───星乃、まだ起きてる?」
「あ、うん!起きてるよ…っ!」
椅子に座りながら返事をすると、ガチャッとドアが開いた。そこからひょこっと顔を覗かせたのは、ショートカットの黒髪の女性。
「あのね、私、明日休みだってことをさっき伝えるの忘れてて」
「あ、そうなんだね」
「うん。だから明日、お出掛けしない?」
「!! で、でもいいの?せっかくの休みなのに…」
「いいよ。色々買い物したり美味しいものを食べようよ」
「…うんっ!!」
「ふふ」
クールな彼女は綺麗に笑うと、「じゃ、おやすみ」と言って部屋のドアを閉めた。
「明日は伊織(いおり)さんとお出掛けかぁ…楽しみだな~」
私は今、私を養ってくれている叔母とふたりで暮らしている。仕事が多忙な彼女とは時間が合うことがあまりないので一緒に出掛けられることになって嬉しい。
「…よし、明日に備えて寝よう!」
私は布団にインして、部屋の電気を消して真っ暗にした。
◇
ふわふわ、ふわふわ。
自分が、底の無い奈落に堕ちていく。
両足がようやく地に着いたかと思えば、今度は前にも見た扉が目の前に現れた。
「またこの扉…」
《おいで、星乃》
「……っ、」
またあの優しい声が聞こえて、目頭が熱くなるほどに胸が切なく締め付けられた。
その声に導かれるように、私は扉に向かって手を伸ばした。
──────ガチャッ



