「…星乃ちゃん…あのね。もしかすると、君がここに来てしまったのは、俺のせいかもしれない」
「……えっ?」
私が幽体離脱しているのは氷雨くんのせいって、どういうこと?
「だって、俺、君に言ってしまったから」
「え?何を…」
「『今度、うちにおいで』って。」
「…あ」
「今日、寝る前に弟のメッセージを読んだでしょう?…せっかく都合の良い日を教えてくれたのに、その約束はもう叶ってしまったね」
もし俺のせいだったら、ごめんね。
そう言いながら困ったように笑った氷雨くんに、きゅっと唇を噛んだ。
……そんな顔をしないでほしい。
氷雨くんには、ずっと笑っていてほしい。
彼とは今日が初対面なのに、なぜかそう思わずにはいられなかった。
私は食べかけのお菓子を持ったまま、ピンッと姿勢を正すついでに表情も引き締めた。
「……いいえ!もしそうだとしても、氷雨くんが謝ることなんて一つもないです!」
「星乃ちゃん…?」
「だって、東堂く…澪央くんも氷雨くんも、私のことを助けようとしてくれているじゃないですか。私に纏わる謎の解決方法を探してくれていると知ったとき、私、すっごく嬉しかったんですよ」
「…っ」
「ま、まぁ私はホラー系がめちゃくちゃ苦手なので幽体離脱も出来れば体験したくないと思っていたのは事実ですが…!…でも、あなたの無事に戻れるという言葉を…信じていますので」
そう言って、まだ食べていないお菓子の残りを口にすれば、さっきよりも甘味を感じた。
「……そう言ってくれてありがとう。俺、一昨日、澪央から話を聞いてからずっと星乃ちゃんに会いたいなーって思っていたから…うん、会えて本当に良かった」
表情を和らげた氷雨くんの会いたかったという言葉に、かぁっと頬が熱くなった。
そこに深い意味なんてないと分かっていても、ドキドキしてしまう。



