莉々子の口から出てきた相手のヒントを吟味(ぎんみ)する前に、背後から声がした。
「おい、教室に入りてぇんだけど…何、誰かを探してんの?」
あ、一組(ここ)の生徒かな?
彼に道を譲ろうとした刹那、ピクッと体が揺れた莉々子が素早く振り向いて私の後ろにいる男子生徒を指差した。
「見つけたっ!!」
「なんだ、莉々子かよ」
とても怠そうに後ろ首に手を回した黒髪の彼には、見覚えがあった。
東堂澪央(とうどうみお)くん。
話したことは一度もないけど、容姿がモデルみたいにカッコよくて女子に凄くモテるのだ。おまけに成績も優秀らしい。
「(………え、ちょっと待って。莉々子が言っていた心当たりって、東堂くんのことだったの!?ていうか二人が友達だったなんて聞いてないよ…っ!!)」
何もかも予想外すぎて呆然してしまった。
動揺を隠せないまま東堂くんを見上げていたら、丁度こっちを見た黒い瞳と目が合った。
「──────っ!?」
東堂くんが、一瞬、信じられないようなものを見たような顔をした。
……え、今、私を見て動揺した…?



