「汐月さーん!こっちきてはなそーよ」
「あ、は、はいっ!」
私は少し離れた場所にいたサークルのメンバーに呼ばれ、その輪の中に加わる。
今日は夏のゼミ合宿、宿泊の最終日で最後の夜なんだ。
なんだかんだ言ってあっという間だったゼミ合宿。
結局勉強に没頭しすぎて、私はあまり人と話すことができなかった。
「汐月さん、今テスト何枚合格〜?」
「あ、えと…120枚くらい…?」
私がサークルの先輩の質問に答えると、みんなが驚いた表情をした。
そうして口々に声をあげる。
「マジか…!」
「私まだ96枚なんだけど…!!」
「汐月さんすごすぎー!!」
「あはは…」
私はみんなの言葉に苦笑する。
これでも学年トップっていうのは伊達じゃないしね。
私は地味だし、勉強以外に取り柄なんてないのに、サークルのみなさんは私に話しかけてくれる。
私はこの大学に来て、このサークルに入って良かったって思ってる。
そうしてみんなで過ごしていると、時間はあっという間に進んでいく。
明日もテストはあるので、もう寝ることに。
それぞれの部屋に戻ってみんなが寝ついてしまった。
そんな中で、ひとりむくっと体を起こした。
「寝れない…」
今日は目が冴えてしまってなんだかうまく眠れない。
そういえば、ここの宿泊宿ってバルコニーがあったよね。
そう思い出した私は、スマホだけ手に取って部屋を出た。
バルコニーまで移動した私は、柵にもたれかかって星空を見上げた。
山の上って本当にこんなきれいに星空が見えるものなんだな、なんて感動しながら。
そうして私はしばらく空を見上げていた。
その時——。
「お疲れ」
「ひゃっ…!?」
突然頬に冷たい感覚が落ちて、思わず振り返った。
そこにはよく見知った男の子が、ふたつ飲み物を持って立っていた。
艶のある真っ黒な髪、深い紫色の瞳、パーカーを着ているだけでもそのスタイルの良さが目立っている。
「鈴雲くんっ!?」
私は驚いて声をあげてしまった。
彼はサークルは違えど、知らないわけもない存在だった。
大学ではその顔と性格の良さ、人当たりの良さで有名だからだ。
そんな存在の鈴雲くんが私に話しかけてくるなんて、一体どういうこと…?
「ごめん、ごめん。びっくりさせたな。これ、買ってきたんだけど、飲む?」
そう言って差し出されたのはミルクティーだった。
あ、私の好きな飲み物…。
彼が知っているわけもなくただの偶然なんだろうけど、それでも大好きなミルクティーを出されてもらわない選択肢はなかった。
「もらいます…。あ、お金は——」
「いいよ、俺があげたかっただけだし」
どういう意味?
言葉にはならない疑問が、脳内響いた。
それから、鈴雲くんも私の横に来て夜空を見上げる。
私はゆっくりと、けれどたしかに彼に聞いた。
「あの、どうしてバルコニーに…?」
すると、視線が私の方に向く。
その瞳に私が映って、どうしてかそらす気にはなれなくて、見惚れてしまって。
彼はふわっと微笑んで言った。
「汐月、ずっと他の奴と話してるんだもん。俺も話したかった」
「え、えっと…」
どういうことか、全く理解できなかった。
どうして鈴雲くんが私と話したがるんだろうって、その瞳はどうして私をこんなに愛おしそうに見つめるんだろうって。
その時、するりと冷たい感覚が腕を撫でる。
鈴雲くんの手が触れてる。
それを自覚した途端、熱がブワッと溢れて、熱かった。
「今日ずっと話しかけたいって思ってた。でも、そんな勇気ないし。そのうちに周りに人が集まってくし。だから…その…話せてよかった」
なに…それ…どういうこと…?
だって私、鈴雲くんと話したことなんてほとんどない。
眼中にないものだと思ってたのに。
恥ずかして目をそらした先には、満点の星空が見えた。
キラッと光って、流れ星が流れていく。
ひとつ、ふたつ。
もし願いが叶うというならば、もう少しだけこの時間を。
「私も…鈴雲くんと話せて嬉しい。あの…さ、もうちょっとだけ一緒に話さない?」
「っ…あ、ああ。もちろん」
甘くて、溶けてしまいそうなほどに、熱くなった手のひらが握られる。
星空の下で、私たちは一生忘れられない思い出を残した。
——流れ星さん、どうかこの時間が長く続きますように。
「あ、は、はいっ!」
私は少し離れた場所にいたサークルのメンバーに呼ばれ、その輪の中に加わる。
今日は夏のゼミ合宿、宿泊の最終日で最後の夜なんだ。
なんだかんだ言ってあっという間だったゼミ合宿。
結局勉強に没頭しすぎて、私はあまり人と話すことができなかった。
「汐月さん、今テスト何枚合格〜?」
「あ、えと…120枚くらい…?」
私がサークルの先輩の質問に答えると、みんなが驚いた表情をした。
そうして口々に声をあげる。
「マジか…!」
「私まだ96枚なんだけど…!!」
「汐月さんすごすぎー!!」
「あはは…」
私はみんなの言葉に苦笑する。
これでも学年トップっていうのは伊達じゃないしね。
私は地味だし、勉強以外に取り柄なんてないのに、サークルのみなさんは私に話しかけてくれる。
私はこの大学に来て、このサークルに入って良かったって思ってる。
そうしてみんなで過ごしていると、時間はあっという間に進んでいく。
明日もテストはあるので、もう寝ることに。
それぞれの部屋に戻ってみんなが寝ついてしまった。
そんな中で、ひとりむくっと体を起こした。
「寝れない…」
今日は目が冴えてしまってなんだかうまく眠れない。
そういえば、ここの宿泊宿ってバルコニーがあったよね。
そう思い出した私は、スマホだけ手に取って部屋を出た。
バルコニーまで移動した私は、柵にもたれかかって星空を見上げた。
山の上って本当にこんなきれいに星空が見えるものなんだな、なんて感動しながら。
そうして私はしばらく空を見上げていた。
その時——。
「お疲れ」
「ひゃっ…!?」
突然頬に冷たい感覚が落ちて、思わず振り返った。
そこにはよく見知った男の子が、ふたつ飲み物を持って立っていた。
艶のある真っ黒な髪、深い紫色の瞳、パーカーを着ているだけでもそのスタイルの良さが目立っている。
「鈴雲くんっ!?」
私は驚いて声をあげてしまった。
彼はサークルは違えど、知らないわけもない存在だった。
大学ではその顔と性格の良さ、人当たりの良さで有名だからだ。
そんな存在の鈴雲くんが私に話しかけてくるなんて、一体どういうこと…?
「ごめん、ごめん。びっくりさせたな。これ、買ってきたんだけど、飲む?」
そう言って差し出されたのはミルクティーだった。
あ、私の好きな飲み物…。
彼が知っているわけもなくただの偶然なんだろうけど、それでも大好きなミルクティーを出されてもらわない選択肢はなかった。
「もらいます…。あ、お金は——」
「いいよ、俺があげたかっただけだし」
どういう意味?
言葉にはならない疑問が、脳内響いた。
それから、鈴雲くんも私の横に来て夜空を見上げる。
私はゆっくりと、けれどたしかに彼に聞いた。
「あの、どうしてバルコニーに…?」
すると、視線が私の方に向く。
その瞳に私が映って、どうしてかそらす気にはなれなくて、見惚れてしまって。
彼はふわっと微笑んで言った。
「汐月、ずっと他の奴と話してるんだもん。俺も話したかった」
「え、えっと…」
どういうことか、全く理解できなかった。
どうして鈴雲くんが私と話したがるんだろうって、その瞳はどうして私をこんなに愛おしそうに見つめるんだろうって。
その時、するりと冷たい感覚が腕を撫でる。
鈴雲くんの手が触れてる。
それを自覚した途端、熱がブワッと溢れて、熱かった。
「今日ずっと話しかけたいって思ってた。でも、そんな勇気ないし。そのうちに周りに人が集まってくし。だから…その…話せてよかった」
なに…それ…どういうこと…?
だって私、鈴雲くんと話したことなんてほとんどない。
眼中にないものだと思ってたのに。
恥ずかして目をそらした先には、満点の星空が見えた。
キラッと光って、流れ星が流れていく。
ひとつ、ふたつ。
もし願いが叶うというならば、もう少しだけこの時間を。
「私も…鈴雲くんと話せて嬉しい。あの…さ、もうちょっとだけ一緒に話さない?」
「っ…あ、ああ。もちろん」
甘くて、溶けてしまいそうなほどに、熱くなった手のひらが握られる。
星空の下で、私たちは一生忘れられない思い出を残した。
——流れ星さん、どうかこの時間が長く続きますように。


