私は、涙を拭って、〇〇を見た。
「……じゃあさ」
「ん?」
「私と結婚しようよ」
〇〇が、ぴたりと固まった。
「……え?」
「だから、結婚しようって」
自分で言っておきながら、急に恥ずかしくなった。
でも、もう引っ込めるつもりはなかった。
「だって、私、〇〇とずっと一緒にいたいもん」
〇〇は、しばらく私を見つめていた。
私は、照れ隠しに笑った。
「……あ、逆プロポーズってやつ?」
すると、〇〇が思わず吹き出した。
「……お前、何言ってんの」
「えー、だって〇〇が言わないから」
「……いや、急すぎるだろ」
「そっちが言う? 私だって今めっちゃ恥ずかしいんだけど」
〇〇は笑いながら、片手で顔を覆った。
「……ほんと、そういうところ変わんないね」
「何それ。褒めてる?」
「……まあ、そういうことにしとく」
少しの間、二人で笑った。
さっきまで泣いていたのが嘘みたいだった。
でも、笑い終わったあと、〇〇はゆっくりと私の手を握り直した。
「……本当に、俺でいいの?」
その声は、さっきまでとは違っていた。
冗談じゃなく、本当に不安なんだと思った。
私は、迷わずうなずいた。
「〇〇がいい」
「……俺、これからも迷惑かけるかもしれないよ」
「うん」
「余裕がなくなって、うまくいかないことだってあると思う」
「うん」
「……それでも?」
私は、笑った。
「それでも、一緒にいたいよ」
だって、私が欲しいのは、何もかも完璧な〇〇じゃない。
いつだって余裕があって、何でもうまくできて、絶対に私を不安にさせない人。
そういう人じゃなくて。
弱いところも、かっこ悪いところも、ちゃんと見せてくれる〇〇がいい。
私だって、いつも強いわけじゃない。
不安になるし、寂しくなるし、面倒くさいところだってある。
だから、お互いにうまくできない日があっても、二人でいられたらいい。
「……私、〇〇と一緒にいるとき、何でもないことでも楽しいんだよ」
〇〇は、黙って聞いていた。
「一緒にご飯食べてるだけで嬉しいし、隣に座ってるだけで幸せだし。疲れて何も話さない日だって、〇〇が隣にいてくれたら、それだけでいい」
私は、少しだけ笑った。
「だから、そんなに頑張って、私を幸せにしようとしなくていいよ」
「……うん」
「一緒に幸せになろうよ」
その瞬間、〇〇の顔がくしゃっと歪んだ。
泣きそうな顔だった。
〇〇は私の手を引いて、ぎゅっと抱きしめた。
「……ずるいな、お前」
「……何が?」
「……そんなこと言われたら、もう逃げられないじゃん」
その言葉に、私は〇〇の背中に腕を回した。
「……逃げないでよ」
〇〇の腕に、ぎゅっと力がこもった。
「……うん」
少しして、耳元で声がした。
「……俺も、お前と結婚したい」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
「……え?」

