Jour de neige

 問題児として迷惑をかけたのに、まさか感謝されるなんて。
 不思議なお兄さんだ。
「スキーやリフトは無理に好きにならなくてもいいけど、雪まで嫌いになっちゃうのは淋しいから、これをあげる。他の子には内緒だよ」
 そう言って、小さなスノーグローブをくれた。
「わぁ、綺麗⋯⋯いいの?」
「うん。だけど、誰にも言っちゃダメだからね」
「ありがとう⋯⋯!」

 悲惨なまま終わるはずだったスキー合宿は、素敵な思い出になった。
 まるで、遅れてきたサンタクロースみたいな人だ。

 バスに揺られてゲレンデをあとにしてからも、何だか、あのお兄さんのことが頭から離れずに居た。
 それは、合宿が終わって暫くしても、ずっとそうだった。
 ずっと、というのは、数日、数週間、数ヶ月どころか、それこそ約6年以上もの間。

 つまり、大学生になって、今の夫と出逢うまで、あのインストラクターのお兄さんのことが忘れられずに居た。
 思春期でありながら、一度も他の誰かを好きになることすら出来ず。