世界が青色にひっくり返る、たった一秒の奇跡――BLUE DIARYを抱きしめて――

心臓がこれまでにないほど激しく脈打ち、熱い塊が喉の奥までせり上がってくる。駐輪場の狭いトタン屋根の下、激しい雨の音さえも遠ざかり、お互いの速い呼吸の音だけが、やけに鮮明に鼓膜を震わせていた。
アオの白い頬が、夕暮れの光と雨の薄暗さの中で、じわじわと林檎のように赤く染まっていく。
お互いの距離は、あと数センチ。
その時――。
『まもなく、1番線に、電車が参ります』
近くの改札から、電子的なアナウンスと激しい警告音が、僕たちの閉じた世界を乱暴にぶち破った。
ハッと我に返る。アオが小さく肩を跳ねさせ、僕もまた、自分の言葉の重さに今さら顔がカッと熱くなった。
「あ、あの、電車……!」
アオが上ずった声で駅の方を指さす。
「走るぞ、アオ!」
これ以上、この至近距離でアオの顔を見ていたら、本当にどうにかなってしまいそうだった。僕はアオの手首を、理屈も計算もなく衝動のままに掴むと、トタン屋根の下から激しい雨の中へと飛び出した。
「わっ……!? ハル、冷たっ!」
背後でアオが悲鳴のような声を上げるけれど、繋いだ手は絶対に離さなかった。
頭から冷たい雨を浴びているはずなのに、掴んだアオの手首の熱さだけが、僕の体中に流れ込んできて体の芯が焦げ付きそうだ。
水たまりを蹴立て、激しい雨のカーテンを突き破って走る。
息が苦しい。胸の奥のビートは、もう楽曲の最高潮を超えて爆発しそうだった。
振り返る余裕なんてない。でも、僕を追いかけて走るアオの足音と、繋いだ手から伝わる確かな体温が、僕のすべてだった。
理屈抜きの嵐の中、僕たちは二人の高鳴る鼓動を置き去りにしたまま、夕暮れの駅へと滑り込んでいった。