キーンコーンカーンコーン。
救いの鐘――五時限目の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた瞬間、ハルは教科書に埋めていた顔を上げ、思い切り机に突っ伏した。限界まで張り詰めていた緊張が一気に抜け、肺の中の空気をすべて吐き出すような深いため息が出る。
「あはは、ハル、お疲れ様。はい、これ数学のノート。写しとくんだよ?」
アオは机の上の歴史の教科書をツンツンとつつき、自分の綺麗に配られたノートをハルの机に置くと、軽やかな足取りで女子グループの輪へと戻っていった。彼女が離れただけで、ハルの周りの空気の温度がすっと下がるような錯覚に陥る。
「……死ぬかと思った……」
「おーおー、お熱いねぇ、ハル先生」
背後から、わざとらしいほどニヤついた声が降ってきた。
振り返ると、ハルの後ろの席のシュンが、椅子の背もたれに逆向きにまたがり、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべてこちらを覗き込んでいた。
「……シュン。お前、いつから見てた」
「『お前のこと――』のあたりからフルコンボだドン」
「全部じゃねえか!」
ハルはカッと顔を赤くして、机の上の消しゴムをシュンに向けて投げつけた。シュンはそれをひょいっと片手でキャッチすると、さらに声を潜めて身を乗り出してくる。
「いやー、傑作だったわ。お前、顔真っ赤にして歴史の教科書にダイブするんだもんな。アオちゃんもアオちゃんで、あんな至近距離で自覚ナシなんだから恐ろしいよ。お前、心臓まだ動いてる?」
「うるさい、止まりかけてる。……っていうか、そんなに声デカかったか?」
ハルは慌ててアオのいる女子グループの方を盗み見た。彼女は友達と楽しそうに週末の予定を話していて、こちらには気づいていない。
「声は小さかったけどさ、お前の『取り乱し方』が尋常じゃなかったから、後ろから見てて一発で分かったわ。ハル、お前さ……完全にアオちゃんに『嵐』喰らってんな?」
シュンのからかうような、でもすべてを見透かしたような言葉に、ハルはぐうの音も出ない。
理屈抜きでかき乱されるこの感情を、これ以上隠し通せる自信が、ハルにはもう完全になくなりかけていた。
救いの鐘――五時限目の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた瞬間、ハルは教科書に埋めていた顔を上げ、思い切り机に突っ伏した。限界まで張り詰めていた緊張が一気に抜け、肺の中の空気をすべて吐き出すような深いため息が出る。
「あはは、ハル、お疲れ様。はい、これ数学のノート。写しとくんだよ?」
アオは机の上の歴史の教科書をツンツンとつつき、自分の綺麗に配られたノートをハルの机に置くと、軽やかな足取りで女子グループの輪へと戻っていった。彼女が離れただけで、ハルの周りの空気の温度がすっと下がるような錯覚に陥る。
「……死ぬかと思った……」
「おーおー、お熱いねぇ、ハル先生」
背後から、わざとらしいほどニヤついた声が降ってきた。
振り返ると、ハルの後ろの席のシュンが、椅子の背もたれに逆向きにまたがり、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべてこちらを覗き込んでいた。
「……シュン。お前、いつから見てた」
「『お前のこと――』のあたりからフルコンボだドン」
「全部じゃねえか!」
ハルはカッと顔を赤くして、机の上の消しゴムをシュンに向けて投げつけた。シュンはそれをひょいっと片手でキャッチすると、さらに声を潜めて身を乗り出してくる。
「いやー、傑作だったわ。お前、顔真っ赤にして歴史の教科書にダイブするんだもんな。アオちゃんもアオちゃんで、あんな至近距離で自覚ナシなんだから恐ろしいよ。お前、心臓まだ動いてる?」
「うるさい、止まりかけてる。……っていうか、そんなに声デカかったか?」
ハルは慌ててアオのいる女子グループの方を盗み見た。彼女は友達と楽しそうに週末の予定を話していて、こちらには気づいていない。
「声は小さかったけどさ、お前の『取り乱し方』が尋常じゃなかったから、後ろから見てて一発で分かったわ。ハル、お前さ……完全にアオちゃんに『嵐』喰らってんな?」
シュンのからかうような、でもすべてを見透かしたような言葉に、ハルはぐうの音も出ない。
理屈抜きでかき乱されるこの感情を、これ以上隠し通せる自信が、ハルにはもう完全になくなりかけていた。



