世界が青色にひっくり返る、たった一秒の奇跡――BLUE DIARYを抱きしめて――

「――なんてね。ハル、びっくりしすぎ!」
アオはいつもの通り、悪戯っぽくケラケラと笑っている。僕をからかう時の、いつもの日常の、いつもの彼女の笑顔。
けれど、僕の世界はもう、完全に作り変えられてしまっていた。
昨日までのグレーな日常のトーンには、もう二度と戻れない。アオの笑顔の眩しさも、吹き抜ける少し肌寒い風の冷たさも、街のノイズも、すべてがさっきの「1秒」を境に、全く別の意味を持って僕の五感に突き刺さってくる。
ドクン、ドクン、と胸の動悸がどうしても止まらない。
呼吸の整え方すら忘れてしまったような感覚のなか、ふと視線を落とすと、自分の手が微かに震えていることに気づいた。寒さのせいじゃない。アオへの、制御しきれない圧倒的な熱量に、僕の身体が悲鳴を上げているんだ。
(もう、ただの友達の顔はできない――)
無邪気に笑いながら先を歩き出すアオの背中を見つめながら、ハルは震える拳をぎゅっと握りしめた。
これまでは「気になる友達」という安全な枠の中に自分を閉じ込めておけた。でも、その境界線はたった今、音を立てて崩壊した。
ここから先は、戻れない場所へのカウントダウン。
胸の奥で暴れだした制御できない恋という狂おしいほどの衝動と、友達のままでいられない終わりのない葛藤。ハルの心は、アオという名の嵐に完全にオフラインにされたまま、さらなる激しい衝動の渦へと、ノンストップで巻き込まれていくのだった。