世界が青色にひっくり返る、たった一秒の奇跡――BLUE DIARYを抱きしめて――

「その意味……今、ちゃんと話してもいい?」
ハルの口からこぼれ出た言葉は、自分でも驚くほど真っ直ぐで、迷いがなかった。
教室の喧騒が、一瞬で遠い背景のノイズへと変わる。網膜の裏側で弾ける青い衝動に突き動かされるように、ハルはアオの瞳をじっと見つめ返した。
「……え」
アオが小さく息を呑む。
いつもなら悪戯っぽくはぐらかすはずの彼女が、今はただ驚きと、それ以上の期待に胸を膨らませるようにして、潤んだ瞳をハルに向けている。アオの耳たぶの赤みが、さらにぐっと濃くなった。
『秒で落ちた』あの瞬間から、もうハルの心にブレーキなんて存在しなかった。昨日までのグレーな日常、言い訳だらけの友達関係、そんなものは全部、この瞬間の熱量で消し飛ばしてしまえばいい。
ハルは一歩、アオとの距離を縮めた。
かすかに漂う彼女の甘い香りが、ハルの決意をさらに加速させる。
「俺、ずっとお前のこと――」
「おーーーーーい! ハル! アオちゃん! 朝から何スピリチュアルな空間作ってんの!」
あと一歩で核心に触れる、その決定的な瞬間。
教室の入り口から、空気を読まないシュンの大声が文字通り『嵐』のように割り込んできた。
「ぶふぇっ……!?」
ハルは盛大にずっこけそうになり、アオも「ひゃっ!?」と短い悲鳴を上げて弾かれたようにハルから距離を取った。
「いやー、廊下まで二人のピンク色のオーラが漏れてたわ。ハル、お前また顔が歴史の教科書みたいに真っ赤だぞ?」
ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべたシュンが、ハルの肩をガシガシと組みながら二人の間に割って入る。
「シュ、シュン……! お前、マジでタイミング……!」
ハルが般若のような顔でシュンを睨みつけるが、シュンはどこ吹く風で「おはよ、アオちゃん!」と手を振っている。アオは顔を真っ赤にしたまま、「お、おはよ、シュンくん……! 私、ちょっと自分の席戻るね!」と、逃げるように女子グループの方へと走り去ってしまった。
「あーあ、行っちゃった。で、どこまで進んだの? ハル先生」
「お前のせいでスタートラインに戻されたよ!」
シュンの脇腹に全力で拳を叩き込みながら、ハルは遠ざかるアオの背中を見つめた。
遮られてしまったけれど、アオのあの表情を見ればわかる。僕たちの秒で加速していく青春は、もう誰にも止められないところまで来ているんだ。