「……あ」
声にならない声を漏らしたまま、ハルは教室の入り口で完全にフリーズしていた。
頭の中の思考回路がショートして、一歩も動けない。アオのあの、ほんの少し照れたような、でも僕を待っていたかのような微笑みが、網膜の裏に焼き付いて離れなかった。
そんなハルの様子に気づいたのか、アオは友達との会話を切り上げると、こちらに向かって歩き出してきた。
一歩、近づくたびに、ハルの心臓のビートが「秒で」跳ね上がっていく。
「ハル、おはよ!」
目の前まで来たアオが、いつもより少しだけ声を弾ませて、僕を見上げてきた。
でも、昨日までの「おはよ!」とは何かが決定的に違っていた。いつもなら真っ直ぐに僕の目を覗き込んでくるはずなのに、今日のアオの視線はどこか気恥ずかしそうに泳いでいる。
よく見ると、アオの白い耳のあたりが、ほんのりと淡い桜色に染まっていた。
「……あ、うん。おはよ、アオ」
ハルは上ずりそうになる声を必死に抑えて、なんとかそれだけを返した。
至近距離で向かい合うと、昨日、あの土砂降りの雨宿りの中で繋いだ右手のひらの熱さが、一瞬で蘇ってくる。
「あの、さ……」
アオが上目遣いにハルを見つめ、制服のスカートの端をきゅっと握りしめた。
「昨日の、あの……『お前がいるからだろ』ってやつ」
アオの口からそのワードが飛び出した瞬間、ハルの全身からカッと火が出そうになる。アオはさらに顔を赤くしながら、でも、逃げ出さずにハルの目をじっと見つめ返してきた。
「私、……昨日から、ずっとその意味、考えてたんだからね?」
悪戯っぽく笑う余裕なんて、今のアオにはひとかけらも残っていなかった。ただひたむきに、照れくささを隠せないまま、アオのなかの「青春」の衝動もまた、信じられないスピードで加速しているのが分かった。
二人の間に流れる、昨日までとはまったく違う、甘くて、少しだけもどかしい空気。
ハルは、アオのその真っ直ぐな瞳から、もう一瞬たりとも目を逸らすことができなかった。
声にならない声を漏らしたまま、ハルは教室の入り口で完全にフリーズしていた。
頭の中の思考回路がショートして、一歩も動けない。アオのあの、ほんの少し照れたような、でも僕を待っていたかのような微笑みが、網膜の裏に焼き付いて離れなかった。
そんなハルの様子に気づいたのか、アオは友達との会話を切り上げると、こちらに向かって歩き出してきた。
一歩、近づくたびに、ハルの心臓のビートが「秒で」跳ね上がっていく。
「ハル、おはよ!」
目の前まで来たアオが、いつもより少しだけ声を弾ませて、僕を見上げてきた。
でも、昨日までの「おはよ!」とは何かが決定的に違っていた。いつもなら真っ直ぐに僕の目を覗き込んでくるはずなのに、今日のアオの視線はどこか気恥ずかしそうに泳いでいる。
よく見ると、アオの白い耳のあたりが、ほんのりと淡い桜色に染まっていた。
「……あ、うん。おはよ、アオ」
ハルは上ずりそうになる声を必死に抑えて、なんとかそれだけを返した。
至近距離で向かい合うと、昨日、あの土砂降りの雨宿りの中で繋いだ右手のひらの熱さが、一瞬で蘇ってくる。
「あの、さ……」
アオが上目遣いにハルを見つめ、制服のスカートの端をきゅっと握りしめた。
「昨日の、あの……『お前がいるからだろ』ってやつ」
アオの口からそのワードが飛び出した瞬間、ハルの全身からカッと火が出そうになる。アオはさらに顔を赤くしながら、でも、逃げ出さずにハルの目をじっと見つめ返してきた。
「私、……昨日から、ずっとその意味、考えてたんだからね?」
悪戯っぽく笑う余裕なんて、今のアオにはひとかけらも残っていなかった。ただひたむきに、照れくささを隠せないまま、アオのなかの「青春」の衝動もまた、信じられないスピードで加速しているのが分かった。
二人の間に流れる、昨日までとはまったく違う、甘くて、少しだけもどかしい空気。
ハルは、アオのその真っ直ぐな瞳から、もう一瞬たりとも目を逸らすことができなかった。



