世界が青色にひっくり返る、たった一秒の奇跡――BLUE DIARYを抱きしめて――

昇降口で上履きに履き替え、階段を一段ずつ上っていく。
心臓のドラムロールは、教室のドアに近づくにつれてどんどん激しさを増していった。
(大丈夫だ。いつも通り、普通の顔をすればいい……)
自分にそう言い聞かせ、ハルは意を決して、教室の引き戸をガラガラと開けた。
朝の光が乱反射する、にぎやかな教室。
その中心に、彼女はいた。
友達と談笑していたアオが、ドアの音に気づいてふっとこちらを振り返る。
その瞬間だった。
トツ、とハルの世界のすべての音が消えた。
アオの綺麗な瞳が、真っ直ぐにハルを捉える。
彼女は怒ってもいなければ、引いてもいなかった。昨日、土砂降りの雨のなかでハルが放った衝動の言葉を、その胸の中で一晩中温めていたかのように――ほんの少しだけ照れくさそうに、でも愛おしそうに、唇をきゅっと結んで微笑んだのだ。
窓から差し込む朝の光が、彼女の髪の毛先をきらきらと輝かせている。
アオのその表情、その眼差しが、ハルの心に決定的な衝撃を与えた。
ドットのラインから零れて散るような、青く激しい火花が胸の奥で弾ける。
「コントロール不能」だなんて、そんな生ぬるい言葉じゃ全然足りない。理屈も、言い訳も、昨日まで必死に守ろうとしていた「友達としての距離」も、全部が鮮やかなブルーの閃光に飲み込まれていく。
昨日までのグレーな日常には、もう逆立ちしたって戻れない。
たった1秒。
アオと視線が交わした、その一瞬の出来事だった。
――あぁ、僕はもう、秒で落ちたんだ。
ハルは、自分の恋が完全に、そして決定的に始まったことを確信した。アオが僕に向かって小さく「おはよ、ハル」と口を動かした瞬間、ハルの心臓は世界で一番熱いビートを刻み始めていた。