あの日以来、僕の頭は使い物にならなくなってしまった。
五時限目の数学、黒板を叩くチョークの単調な音も、先生の退屈な声も、今の僕の耳には一切入ってこない。ノートの端には、数式ではなく、無意識に書き殴ってしまったあいつの、――アオの横顔の落書き。
「あーあ、集中なんてできっこないな」
小さくため息をついてシャーペンを置く。胸の奥が、朝からずっと変なビートを刻んでいる。原因は分かっている。分かっているけれど、認めたら本当に戻れなくなってしまいそうで、僕は窓の外の青空に視線を逃がした。
昨日までは、どこにでもあるグレーの日常だったはずだ。それなのに、あの日、放課後の夕暮れの中でアオが僕に向かって悪戯っぽく笑った瞬間から、僕の世界のトーンは完全に変わってしまった。彼女がそこにいるだけで、どんな曇り空だって一瞬で『Sunny day』に変わる。
「……ねぇ、ハル。ここ、答え何?」
不意に、すぐ隣の席から小さく澄んだ声が降ってきた。
心臓が跳ね上がる。振り返ると、そこには教科書で口元を隠しながら、困ったように眉を下げて僕を覗き込む、アオの姿があった。
五時限目の数学、黒板を叩くチョークの単調な音も、先生の退屈な声も、今の僕の耳には一切入ってこない。ノートの端には、数式ではなく、無意識に書き殴ってしまったあいつの、――アオの横顔の落書き。
「あーあ、集中なんてできっこないな」
小さくため息をついてシャーペンを置く。胸の奥が、朝からずっと変なビートを刻んでいる。原因は分かっている。分かっているけれど、認めたら本当に戻れなくなってしまいそうで、僕は窓の外の青空に視線を逃がした。
昨日までは、どこにでもあるグレーの日常だったはずだ。それなのに、あの日、放課後の夕暮れの中でアオが僕に向かって悪戯っぽく笑った瞬間から、僕の世界のトーンは完全に変わってしまった。彼女がそこにいるだけで、どんな曇り空だって一瞬で『Sunny day』に変わる。
「……ねぇ、ハル。ここ、答え何?」
不意に、すぐ隣の席から小さく澄んだ声が降ってきた。
心臓が跳ね上がる。振り返ると、そこには教科書で口元を隠しながら、困ったように眉を下げて僕を覗き込む、アオの姿があった。



