理人の腕の中に包まれた感触を思い出しそうになり、愛梨は距離をとって歩き始める。
「ソ、ソルシエールはこのフロアですよね。行きましょう」
「そんなに慌てなくても、照れて真っ赤になってる顔にツッコミを入れたりしないけど?」
「しっかりツッコんでるじゃないですか!」
意地の悪いセリフに言い返すと、想像以上に声が響いた。
「こんなところで騒いだらダメだろ」
「もう、誰のせいですか!」
「君が可愛い反応をするせいだな」
「からかわないでください。理人さんと違って、こっちは男性に免疫なんてないんですから」
楽しそうな顔で笑う彼をじろりと睨みつけ、愛梨はずんずんと歩みを進めた。
(こんな冗談を言う人だったっけ? 博識で勉強家な一面があると思いきや、私をからかって楽しんでる節があるし)
職場で見る彼とは印象が違うが、きっとこちらの方が素なのだろう。



