どんな商品を作ったら売れるのかという点のみで考えていた愛梨にとって、経営者ならではの視点の話はとても勉強になる。
もっと話を聞きたくて色々と質問しても、理人は嫌な顔ひとつせずに答えてくれる。淀みなく語れるということはそれだけ博識であり、多くを学んできたということだ。
そうして彼の声に耳を傾けていた時。エスカレーターを駆け下りようとする男性に後ろから押され、愛梨は体勢を崩す。
「わっ……!」
「お……っと、大丈夫か?」
危うく転がり落ちそうなところを、理人が咄嗟に抱き止めてくれる。愛梨は腰を支える彼の手の大きさに息を呑んだ。
女性とはまるで違う硬くて大きな体躯、耳元で聞こえる安堵のため息と低い声、至近距離だからこそ感じ取れる僅かな香水の香り、それらに鼓動が大きく跳ね上がる。
「すっ、すみません。大丈夫です」
エスカレーターから落ちそうになった恐怖なのか、理人に抱きとめてもらったからなのか、いまだに心臓がバクバクと高速でリズムを刻んでいる。
真っ赤になっているであろう顔を見られないよう、俯きつつ身を引いて自分の足でしっかりと立った。
(細身に見えるのに、軽々と抱き止めてくれた……)



