脅迫婚?!~悪い噂の絶えない社長が、実は誠実で一途だったなんて信じられません!~


「お、おかえりなさい……」
「ただいま。カタセは随分と役員会議が好きなんだなと思っていたが、保守派と革新派に割れてるのか」

ソルシエールからの提案に、毎回『次回の役員会で検討します』と答えていたのを当て擦っているのだろう。からかい口調の理人に、ムッと口を尖らせる。

「別に派閥ってほどじゃないですけど、会社全体がなかなか古い体質を変えられていないんですよ。今日ようやく決裁のラインを下げてもらったので、今後はもう少しスムーズになるはずです」
「そうか。君も苦労するな」

理人は「白状すると、うちも以前はそうだった」と苦笑する。

「俺が入社した頃は、商品のカラーバリエーションを一色増やすだけでも何人もの承認が必要だった。現場は『また一週間待つのか』って不満そうだったな」
「そうなんですか? 今のソルシエールからは想像がつきません」

それを変えたのが彼なのだろうか。愛梨が尋ねると、「父と相談しながら、少しずつだったけど」と肩を竦めた。